
「賃貸併用住宅を建てたいけれど、ローン審査に通るか不安…」そんな悩みを抱えていませんか。
賃貸併用住宅のローンは、居住部分に加えて賃貸部分の収益性も審査対象となるため、一般的な住宅ローンより慎重に判断される傾向にあります。
この記事では、審査基準・審査に通りやすくする5つのコツ・審査に落ちた場合の対策・金融機関ごとの特徴まで、わかりやすく解説します。
「家族の住まいを確保しながら収入源も得たい」とお考えの方は、ぜひ最後までごらんください。
このコラムのポイント |
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・賃貸併用住宅のローンは一般住宅ローンより審査が厳しいものの、収益性を示せれば金融機関の評価が高まります。 ・頭金準備や返済負担率の調整などの対策で、審査通過率を高められます。 ・審査に通らない場合でも、不動産投資ローンへの切り替えや計画の見直しなど複数の対応策があります。 |
Contents
賃貸併用住宅のローン審査が厳しくなる理由

賃貸併用住宅のローンは通常の住宅ローンと比較して審査が厳しくなる傾向があります。
金融機関が審査の際に重視するポイントは主に以下の5つです。
- ・申込者の属性
- ・信用情報
- ・健康状態
- ・物件の担保価値と収益性
- ・返済負担率
これらの審査項目はそれぞれ関連しており、総合的に判断されます。
賃貸併用住宅は通常の住宅ローンと異なり、将来にわたる家賃収入の安定性や物件の資産価値の維持といった投資的側面も重要視されます。
また、返済原資として家賃収入を見込む場合でも、金融機関は空室リスクを考慮して全額を返済能力として認めないケースがほとんどです。
申込者の安定した収入基盤と信用力に加え、物件自体の市場競争力や将来性について説得力のある計画を示しましょう。
賃貸併用住宅のローン審査に通りやすくする5つのコツ

賃貸併用住宅のローン審査に通りやすくするためには、事前の準備と対策が大切です。
ここでは、審査に通りやすくする5つのコツをご紹介します。
頭金をできるだけ多く準備する
目安として物件価格の1割〜2割以上の頭金を準備しましょう。
頭金が多いほど、借入額が減り返済負担率が下がるため、金融機関からの信用度が上がります。
自己資金比率が高いことは、資金計画の堅実さと計画性の高さをアピールすることにもつながります。
ただし、低金利で借入できる場合は、すべての資金を頭金に充てるよりも、一部を手元に残しておくことで、緊急時の資金繰りや他の投資機会に活用できる点もメリットです。
頭金のバランスについては、金融機関への相談がおすすめです。
こちらの記事で、賃貸併用住宅の資金計画について詳しく解説しています。
〈関連コラム〉賃貸併用住宅の罠を回避するためのポイント|空室対策・自宅の割合など解説
ペアローンや収入合算で世帯収入を上げる
- ・ペアローン:配偶者など収入のある親族とそれぞれがローンを組む方法
- ・収入合算:申込者本人の収入に合算者の収入を加えて借入額を増やす方法
収入合算は手続きが比較的シンプルなのが特徴ですが、主たる債務者は申込者本人であり、収入合算者は連帯保証人となる点に注意が必要です。
一方、ペアローンは各自が債務者となるため、共有名義での登記となり、それぞれの収入に応じた借入が可能です。
ただし、どちらの方法も離婚などの際に、ローンの分割や名義変更が複雑になるリスクがあります。
また、収入合算者やペアローン相手の信用情報も審査の対象となるため、事前の確認が重要です。
返済負担率を下げる
返済負担率とは年収に占める年間返済額の割合のことで、金融機関により異なりますが、25%〜35%以内が目安とされています。
計算方法は「年間返済額÷年収×100」です。
返済負担率を下げるには、借入期間を長くするという方法があります。
たとえば、3,000万円を金利1.5%で借りる場合、25年返済より35年返済のほうが月々の返済額が約3万円少なくなります。
賃貸併用住宅のローン申込前に他の借入を整理・完済しておけば、返済負担率が下がり、審査に有利です。
信用情報をクリーンに保つ・改善する
CICなどの信用情報機関に自身の情報を開示請求し、延滞や異動情報がないか確認しましょう。
仮に問題があれば、解消まで一定期間必要な場合もあります。
見落としがちなのは、スマートフォンの分割払いやクレジットカードの支払い遅れなども信用情報に影響する点です。
少額の支払いでも遅れがあると、信用情報に記録され、住宅ローンの審査に悪影響をおよぼします。
収益性の高い事業計画を立て、金融機関に説明する
賃貸併用住宅のローン審査でとくに重要なのは、賃貸部分の収益性です。
周辺の家賃相場、競合物件、空室率などの市場調査に基づいた、現実的で説得力のある収支計画書を作成しましょう。
想定家賃の根拠、空室リスクへの対策、長期的な修繕計画などを盛り込み、「この計画なら安定した家賃収入が見込める」と金融機関を納得させることがポイントです。
住宅会社や不動産会社に相談しながら、地域の賃貸需要や適正家賃を調査し、説得力のある事業計画を作成するのも有効です。
住宅ローンが組めない場合の対策

賃貸併用住宅のローン審査に通らなかった場合でも、以下3つの対策方法があります。
- ・不動産投資ローンを検討する
- ・借入条件を見直して再申し込みする
- ・賃貸併用住宅の建築計画自体を見直す
不動産投資ローンを検討する
一般的に不動産投資ローンは住宅ローンより金利が高いですが、物件全体の収益性を重視するため、申込者の属性要件が住宅ローンより緩やかな場合があります。
ただし、その分、事業性がより問われるため、確実な収益計画や、空室対策などのリスク管理計画をより詳細に求めらます。
住宅ローンの金利が1%台であるのに対し、不動産投資ローンは2%〜4%台が相場のため、返済計画をしっかり見直しましょう。
借入条件を見直して再申し込みする
借入希望額を減らす、より収益性の高い物件計画に変更する、収入合算者を加えるなど、条件を変更して再度申し込む方法も有効です。
- ・賃貸併用住宅の規模や仕様を見直し、建築コストを下げる
- ・賃貸部分の間取りや設備を変更して収益性を高める
変更点をまとめ、前回の審査で指摘された点を改善したことをアピールする資料を作成し、再申し込みの際に提出すると効果的です。
賃貸併用住宅の建築計画自体を見直す
規模を縮小する、賃貸部分の割合を減らすなど、ローンが通りやすい計画に変更するのもおすすめです。
- ・当初2戸の賃貸部分を計画していたものを1戸に減らし、総額を抑える
- ・居住部分の割合を増やして賃貸部分を減らすことで、一般的な住宅ローンの条件に近づける
とくに、居住部分が全体の1/2以上になれば、住宅ローンの対象となりやすいです。
金融機関ごとの審査傾向と特徴

賃貸併用住宅のローンは、金融機関によって審査の傾向が異なります。
ここでは、主な金融機関のタイプ別に特徴を紹介します。
メガバンク
メガバンクは、年収、勤務先などの属性を重視する傾向があります。
安定した大企業勤務であれば評価が高まりやすいですが、自営業者には厳しい審査となる場合が多いです。
しかし、審査に通れば金利や団体信用生命保険の条件が良いため、まずは検討したい方法です。
地方銀行
地方銀行は地域密着型で、地元の土地勘や賃貸市場に詳しいという特徴があり、地域の賃貸需要を理解したうえで審査が行われます。
エリアによってはメガバンクより積極的な融資姿勢が期待できます。
地元での知名度や人間関係も評価される傾向があるため、長く地元に住んでいる方や地域での信頼関係がある方にはメリットです。
ネット銀行
ネット銀行は、金利の低さや手続きの利便性が魅力です。
来店不要で手続きができるため、忙しい方にとっては大きなメリットです。
ただし、対面での相談が難しく、審査はデータを重視される傾向があります。
そのため、数字で説明しやすい安定した収入や信用情報が重要です。
フラット35
住宅金融支援機構の「フラット35」は、賃貸併用住宅で利用する場合、床面積の要件などの条件があります。
住宅部分が主である前提に注意が必要です。
メリットとしては、長期固定金利で将来の返済額が安定すること、団体信用生命保険が任意加入であることなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、変動金利のローンより金利が高めになる傾向があることや、事務手数料などの諸費用がかかることが挙げられます。
信用金庫・信用組合

信用金庫・信用組合は地域密着型の金融機関で、地域の不動産市場や賃貸需要を熟知しており、地方銀行よりもさらに細かい地域性を考慮した審査が特徴です。
審査では収入だけでなく、人柄や地域での評判なども加味される傾向があるため、地元での信頼関係がある方には好条件で融資を受けられる可能性があります。
ただし、融資限度額や金利がメガバンクに対して劣るので、事前に確認しておきましょう。
ノンバンク
ノンバンクは銀行のように預金業務を行わず、融資などの与信業務を専門とする金融機関のことです。
銀行と比べて審査基準が柔軟で、銀行での融資が難しい場合の選択肢となります。
ノンバンクは、賃料収入の見込みを重視する傾向があります。
ただし、金利は銀行より高めに設定されているので、総返済額の増加を考慮しましょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、創業支援や事業資金の融資を得意とする政府系金融機関です。
賃貸併用住宅に対して、事業資金として融資を受けられる可能性があります。
審査では事業計画の具体性や収益性が評価されるため、賃貸経営の綿密な計画書の準備が肝心です。
賃貸併用住宅のメリット

賃貸併用住宅には、ローン負担軽減以外にも多くの魅力があります。
賃貸併用住宅の主なメリットは以下の5つです。
- ・家賃収入でローン返済負担を軽減できる
- ・条件を満たせば低金利・長期の住宅ローンを利用できる
- ・税制上の優遇措置を受けられる
- ・安定収入源を確保できる
- ・広い土地の有効活用・効率的な建築ができる
これらのメリットを活かすには、立地条件や物件の設計、資金計画などの綿密な検討が重要です。
長期的な視点での資産価値や収益性を見据えた計画づくりが、賃貸併用住宅の成功を左右するカギです。
住宅ローンのメリット・デメリットについて、こちらで詳しく解説しています。
〈関連コラム〉賃貸併用住宅に住宅ローンは使える?メリット・デメリットや条件を解説
賃貸併用住宅の注意点と対策

ここでは、賃貸併用住宅の主な注意点とその対策を解説します。
空室リスクと家賃収入の変動
賃貸経営では、空室が続き予定していた家賃収入が得られず、ローン返済計画に支障をきたす可能性があります。
リスクを抑えるためには、ターゲットとなる入居者層を明確にしたうえで、その層のニーズに応える物件設計が不可欠です。
近隣の競合物件と比較して魅力的な設備(宅配ボックス・防音性・収納量など)を備えることで空室リスクを軽減できます。
ハウスメーカーも重要で、入居者ニーズを把握した設計提案ができる実績豊富な会社を選ぶのがポイントです。
入居者トラブルのリスク
賃貸併用住宅経営において、入居者との間で起こりうる家賃の滞納や騒音問題などのトラブルも想定しておく必要があります。
貸併用住宅の場合はオーナーも同じ建物に居住するため、これらの問題が日常生活の質にも直接影響し、精神的ストレスとなりかねません。
このようなリスクを適切に管理するためには、実績のある賃貸管理会社への業務委託がおすすめです。
一般的に家賃収入の数%の管理費用が発生しますが、時間的・精神的負担の軽減や、トラブル対応を考慮すれば、十分に価値があるといえます。
建築コストが高額になりやすい
賃貸併用住宅は一般住宅よりも建築コストが高額になる場合もあります。
複数世帯が利用する共用設備や、建築基準法が要求する防火区画の確保、住戸間の遮音性能の向上などが必要となるためです。
コストを抑えるには、居住部分と賃貸部分で設備グレードにメリハリをつけましょう。
ご自身が長期的に使用する居住部分には耐久性と快適性を重視した設備を、賃貸部分には入居者ニーズと将来的なメンテナンス性を考慮した設備を選ぶことで、初期費用を抑えられます。
また、ZEH支援事業などの補助金制度を活用することで、コストを軽減可能です。
環境性能の高い建材や設備を採用することで、入居者へのアピールと補助金獲得の両面でメリットが得られます。
通常の住宅より売却しにくい
賃貸併用住宅は購入検討層が投資目的の買い手に限られるため、売却には長い期間を要します。
対策として、投資物件としての魅力を長期的に維持することが求められます。
- ・安定した入居率の維持
- ・計画的な修繕
- ・リノベーションの実施
- ・エリア相場に即した適正家賃の設定 など
また、建築計画の初期段階から将来の出口戦略を見据えた設計を心がけるのもポイントです。
- ・交通利便性の高さや将来的な開発計画がある地域の選定
- ・汎用性の高い間取りの採用
- ・環境性能や耐震性など時代を経ても価値が低下しにくい性能の確保 など
資産価値の持続性を高める要素を優先的に検討することで、将来的な売却時の選択肢を広げられます。
まとめ
賃貸併用住宅のローンは、一般的な住宅ローンに比べて審査がやや厳しい傾向がありますが、事前の準備と対策で審査通過の可能性を高められます。
審査の際には、申込者の属性や信用情報だけでなく、物件の収益性も重要な審査ポイントです。
矢島建設工業は、収益性の高い賃貸併用住宅の設計と資金計画をトータルでご提案しています。
賃貸併用住宅の建築や資金計画など、住まいづくりのことなら、なんでもお気軽にご相談ください。


