
高低差の大きい地域でよく見られる擁壁のある土地を購入する場合、耐用年数やメンテナンス方法を知っておくことが大切です。
擁壁には耐用年数があり、つくられてから年数が経つと老朽化が進み、崩壊リスクが高くなります。
擁壁の崩壊を防ぐためには適切なメンテナンスが必要となり、場合によってはつくり直しで多額の費用がかかるケースも。
そこでこの記事では、擁壁の耐用年数や状態を判断するためのチェックポイント、崩壊を防ぐためのメンテナンス方法について詳しく解説します。
また、耐用年数を過ぎた擁壁のやり直し工事にどれくらいの費用がかかるのかも紹介します。
擁壁のある土地を検討する際に必要な情報をまとめていますので、ぜひ住まいづくりにお役立てください。
このコラムのポイント |
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・擁壁の耐用年数は構造によって異なり、20~50年前後が目安です。 ・ひび割れやずれ、水抜き穴の有無や状態など、擁壁の耐用年数や崩壊リスクをチェックするポイントをご紹介します。 ・擁壁のある土地は必ず契約前に専門家のアドバイスを受けて、要望通りのマイホームを建てられるか確認しましょう。 |
Contents
擁壁の耐用年数は何年?

擁壁とは、高低差のある土地や崖などが崩れないようにするための構造物のことです。
高低差が大きい土地は土砂崩れを起こす可能性があるため、建築基準法や条例によって擁壁の設置が義務付けられています。
擁壁は構造によって複数の種類があり、一般的な耐用年数の目安は次の通りです。
擁壁の種類 | 耐用年数の目安 |
鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁) | 50年前後 |
間知ブロック擁壁 | 30年前後 |
石積み擁壁(大谷石・練石積み擁壁など) | 20~30年前後 |
現在も一般的に採用されることが多い鉄筋コンクリート造擁壁や、間知ブロック擁壁の耐用年数は30~50年前後と言われています。
昭和~平成に採用されることが多かった大谷石積みや練石積み擁壁は、20~30年前後と耐用年数が短くなっています。

また、建築基準法施行以前につくられた擁壁の中には、現在認められていない構造もあるため注意が必要です。
ブロック積み擁壁や石を積み上げただけの空石積擁壁などは、耐用年数に関わらずつくり直しが必要になる可能性があります。
また、擁壁の耐用年数はあくまで目安であり、土地の状況や施工方法などによって変動するため、どのような状況か判断することが大切です。
擁壁のある土地の契約前には知見のある専門家に相談する必要がありますが、ご自身でも基本的なチェックポイントを把握してきましょう。
擁壁の状態を判断するチェックポイント
擁壁のある土地を検討するときは、次のポイントをチェックして状態を判断しましょう。
構造や使われている材料
細かい状態をチェックする前に、まずは擁壁全体を観察して、構造や使われている材料などを確認しましょう。
建築基準法で認められていない構造の擁壁がある土地に住宅を新築する場合、耐用年数に関わらずやり直しが必要になる可能性があるためです。

※やり直しが必要になる擁壁の例
- 空石積み擁壁
- 増し積み擁壁
- 張り出し床版付擁壁
- 二段擁壁
上記のような擁壁がある土地を購入して新築住宅を建てる場合、やり直しのための費用も用意する必要があります。
擁壁のやり直しにかかる費用相場については、後半で詳しく解説します。
表面の状態

実際に擁壁のある土地を見るときは、表面の状態をよくチェックしましょう。
表面に劣化や崩壊リスクのサインが出ている擁壁は、メンテナンスややり直しが必要になり費用が多くかかる可能性があります。
※擁壁表面の劣化サインの例
- ひび割れ
- ブロックや石のずれ
- 膨らみや傾き
- 湿りや水が流れた跡

RC擁壁は頑丈な構造に見えますが、表面のひび割れが多い場合は耐用年数が短く、劣化が進んでいる可能性があります。
「ヘアークラック」と呼ばれる細かいひび割れは問題ないこともありますが、幅が広かったり、サビ水が流れたりした跡が見られる場合は注意が必要です。

また、間知ブロック擁壁や大谷石積み擁壁は、ブロックや石がずれている場合劣化のサインです。
擁壁全体をいろいろな方向から見て、膨らみや傾きもチェックしましょう。
晴れた日が続いているのに擁壁の表面が湿っていたり、水が流れた跡が見られたりする場合は、後述する水抜きがうまくいっておらず倒壊するリスクが考えられるので注意が必要です。
水抜き穴の有無や状態

一定の高さを超える擁壁には水抜き穴の設置が義務付けられているため、表面を観察して有無や状態を確認しましょう。
水抜き穴が適切に設置されていないと、雨が降ったときに地面にしみ込んだ水の逃げ場がなくなり、擁壁に圧力(土圧)がかかって崩壊するリスクが高くなります。
宅地造成等規制法によって、擁壁の面積3㎡ごとに少なくとも1か所の水抜き穴を設置することが義務付けられています。
必要な数の水抜き穴が設けられているか、土や草などで詰まっていないか目視で点検してください。
擁壁の崩壊を防ぐためのメンテナンス方法

耐用年数を過ぎていない擁壁でも、前述したような劣化のサインや倒壊リスクが見られる場合はメンテナンスが必要です。
※擁壁メンテナンスの種類と費用相場
- ひび割れ補修:3万円/m~
- 水抜き穴の設置:3万円/1か所
- すき間補強工事:4~10万円/㎡
参照:一般社団法人日本擁壁保証協会 第15回 やばい擁壁!!工事内容と費用は?【補修編】
擁壁の状態に応じて適切なメンテナンスをすることで、崩壊リスクを軽減し寿命を延ばす効果が期待できます。
ただし、DIYなどでひび割れの表面だけを簡単に直したり、すき間をモルタルで埋めたりしただけでは、擁壁自体の強度や耐久性を保つことはできません。
擁壁に詳しい専門家に現地をチェックしてもらい、適切なメンテナンス方法を選定することが大切です。
耐用年数を過ぎた擁壁のやり直し費用はいくらかかる?

耐用年数を過ぎていて前述したメンテナンスや補修が難しい擁壁や、そもそも建築基準法を満たしていない不適格擁壁の場合は、一度解体してやり直す必要があります。
建築基準法を満たしていない不適格擁壁自体はそのままでも違法建築にはなりませんが、敷地内に新築を建てる場合は現在の基準に合わせる必要があるのです。
新築住宅の建築費用にくわえて、擁壁のやり直し費用がかかるため、あらかじめ相場を把握して予算を用意しなければいけません。
また、建築基準法を満たしていて今は問題ない擁壁でも、耐用年数を迎えるタイミングではやり直し工事が必要になるため、やはり費用相場を把握しておくことは大切です。
擁壁を設置するための材料費・工事費用の相場は、1㎡あたり5~10万円といわれています。
仮に高さ2m、幅10mの擁壁をつくる場合、100~200万円前後の費用がかかるということですね。
ただし、擁壁をやり直す場合は解体工事や廃材処分費用なども必要になり、勾配や土地の状況によっても費用は変動します。
擁壁やり直しの正確な費用については、専門家に相談して見積もりを出してもらいましょう。
まとめ
擁壁には耐用年数があるため、一見きれいでも、劣化が進んでいて崩壊リスクを抱えている可能性もあります。
擁壁のある土地を購入して新築住宅を建てる場合は、事前調査で崩壊リスクやメンテナンス・やり直しにかかる費用を把握することが重要です。
しかし、一般の方が擁壁の構造や状態を漏れなくチェックし、建築基準法や条例などを確認するのは難しいため、必ず土地を決める前に専門家に相談しましょう。
神奈川県横浜市周辺で擁壁のある土地に家を建てる際は、矢島建設工業にご相談ください。
擁壁に詳しいプロが候補の土地まで一緒にお伺いし、状態をチェックし理想のマイホームを建てられるか判断いたします。
Googleのストリートビューでも擁壁の状態をある程度判断できますので、現地を見に行く前の物件もご相談可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。


