盛土は地盤改良すれば大丈夫?リスクと対策、土地決定時に確認するポイントも解説|横浜|矢島建設工業

盛土は地盤沈下のリスクがありますが、適切な地盤改良をすれば、安全な住まいを実現できます。

しかし「地盤改良をすれば安全」と鵜呑みにするのは危険です。

この記事では、盛土地盤のリスクと適切な地盤改良の効果、土地購入前に必ず確認すべきポイントまでわかりやすく解説します。

後悔のない土地選びのために、ぜひ最後までごらんください。

 

このコラムのポイント
・盛土は適切な材料選択と地盤改良工事によって安全性が高まりますが、土地の履歴や周辺環境によってはリスクが残ります。
・地震や豪雨時の滑動崩落リスクは地盤改良だけでは完全に防げないため、立地条件の確認が不可欠です。
・土地購入前には地形・地質の調査、ハザードマップ確認、地盤改良の履歴確認などを実施し、専門家に相談しましょう。

 

盛土や切土とは|造成地の基礎知識

盛土や切土とは|造成地の基礎知識|横浜|矢島建設工業

はじめに、造成地の基本的な特徴について紹介します。

切土と盛土の違い

宅地造成には主に「切土(きりど)」と「盛土(もりど)」という2つの方法があります。

切土とは、山や丘などの高い場所を削って平らな土地を作る方法で、もともとある地盤を利用するため、比較的安定した地盤です。

長年かけて自然に形成された地盤のため、強度も高い傾向にあります。

一方、盛土とは低い地盤や斜面に土を盛り上げて平らにする方法で、谷や沼地、田んぼなどに新しく土を運び入れて造成します。

盛土は人工的に作られた地盤のため、切土に比べて地盤強度が弱くなりやすいのが特徴です。

国土の約7割が山地・丘陵地である日本では、平地確保のため切土や盛土が多くみられます。

盛土が時間をかけて沈む理由

盛土された土地が沈下する主な理由は、土粒子間の隙間である「空隙(くうげき)」にあります。

新しい盛土ほど空隙が多く不安定なため、古くから「盛土した土地は10年寝かせてから家を建てるべき」と言われてきました。

しかし、現在は地盤改良技術の進歩により、新しい盛土でも安全に家を建てられます

造成と地盤改良は違う

混同されることがありますが、造成工事と地盤改良工事は別物です。

  • ・造成工事:山や丘陵などを切り開いたり、低い土地に土を盛ったりして、建物が建てられるように土地を整備する工程で、土地の形状を変える工事
  • ・地盤改良工事:すでにある地盤の強度を高める工事で、軟弱な地盤を強化して建物を安全に支えられるようにする工程

「盛土しているから地盤改良は不要では?」と考える方もおられますが、実際には造成工事をしたからといって地盤改良工事が不要になるわけではありません

むしろ造成地や盛土の土地では、地盤改良が必要になるケースが多くあります。

質の良い盛土と危険な盛土の見分け方

すべての盛土が同じように危険というわけではありません

【質の良い盛土の特徴】

  • ・適切な材料(山砂や再生コンクリート砂など)を使用している
  • ・層ごとに十分に締固めが行われている
  • ・施工時に水はけに配慮されている
  • ・擁壁(※)に適切な排水設備が設けられている
  • ・地盤改良工事が施されている

※擁壁(ようへき):斜面や段差などの土が崩れないように、土の圧力に抵抗して支える壁

【危険な盛土の特徴】

  • ・ゴミ、木片、ガラスなどの異物が混入している
  • ・締固めが不十分で空隙が多い
  • ・排水設備が不十分で水はけが悪い
  • ・急傾斜地に無理に造成されている
  • ・切土と盛土の境界部分がある

地盤調査会社による調査や、自治体・不動産会社からの情報提供を通じて、盛土の質を判断できます。

盛土の品質によって将来のリスクが異なるため、土地選びの段階で確認しましょう。

擁壁のある土地の選び方について、こちらで詳しく解説しています。

〈関連コラム〉擁壁のある土地はやめた方がいい?後悔を防ぐ購入時のチェックポイント

盛土のリスクと地盤改良すれば大丈夫な理由

盛土のリスクと地盤改良すれば大丈夫な理由|横浜|矢島建設工業

盛土にはさまざまなリスクがありますが、地盤改良によってほとんどを軽減できます。

ここでは、主な盛土のリスクと、地盤改良がそれらをどのように解決するのかを解説します。

盛土自体の圧密沈下

圧密沈下とは、新しく盛られた土が時間経過や建物の重みにより、土の粒子間の隙間が圧縮されて沈下することです。

これが不均一に起こると、建物が傾く「不同沈下」の原因となります。

【対策】

地盤改良でセメント系固化材などを土と混合・攪拌(かき混ぜる)することで、盛土自体の強度を高め、沈下量を抑えられます。

地盤改良によって盛土が沈下しても、建物への影響は最小限です

切土と盛土が混在する地盤

造成地では、一部を削り取る「切土」と、土を盛る「盛土」が混在することがあります

盛土部分は地震や大雨で変形しやすいのに対し、切土部分はほとんど変形しないため、境界部分に大きな段差(不同沈下)が生じます。

災害によって地盤事故が発生しやすいため、切土と盛土の境界線付近はとくに注意が必要です。

【対策】

地盤改良で盛土部分の強度を高め、切土部分との強度差を少なくすることで、地盤全体の均質性が向上します。

これにより、建物が不均一に沈下するリスクを低減できます。

異物の混入

盛土にコンクリートガラ、ゴミ、木片、大きな石などが混入していると、土の中に隙間が多くなり、予期せぬ沈下や地盤の不安定化を引き起こします

異物が混入した盛土は、見た目では判断が難しいため、地盤調査で確認すると安心です。

【対策】

セメント系固化材を混合・攪拌する工法では、異物などによる隙間を充填することで、地盤全体の安定性が向上します。

ただし、あまりにも大きな異物や多量の混入がある場合は除去が必要です。

状況によって適切な対応が異なるため、地盤調査の段階で専門家に相談し、対策を検討しましょう。

排水不良

盛土内の水はけが悪いと、地盤の強度低下や擁壁にかかる水圧で、地盤沈下や擁壁の劣化につながります

【対策】

地盤改良によって地盤の強度を高めると、水分を含んでも強度低下を抑えられます

ただし、地盤改良だけでは排水問題の根本的な解決にはなりません。

水抜き穴の設置や透水性の高い材料への置換、排水路の整備などの排水対策をあわせて実施することが大切です。

「盛土に家を建てるのは危険」と言われる理由|地盤改良の限界

「盛土に家を建てるのは危険」と言われる理由|地盤改良の限界|横浜|矢島建設工業

地盤改良技術の進歩により、多くの盛土リスクに対応できるようになりましたが、すべてのリスクを排除できるわけではありません。

地盤改良だけでは対応が難しい盛土のリスクと、対策について解説します。

大規模な広域災害

地盤改良は敷地内の地盤を強化しますが、周辺の山や斜面全体が崩れるような大規模な土砂災害に対しての効果は限定的です。

過去の地震では、大規模な盛土造成地において「滑動崩落」と呼ばれる現象が多く発生しています。

滑動崩落とは、地震の揺れによって盛土全体が地すべりのように動く現象で、2004年の新潟県中越地震や2011年の東日本大震災でも被害が報告されています。

【対策】

  • ・ハザードマップなどで、土砂災害警戒区域や地すべり危険箇所、大規模盛土造成地に該当しないか確認
  • ・該当する場合は、避難計画の策定や、必要に応じて高台なども検討

擁壁自体の問題

盛土を支える擁壁が老朽化している場合、地盤改良を実施しても擁壁自体が崩壊するリスクがあります。

とくに大雨や地震の際には、擁壁の崩壊により盛土全体が崩れる危険性があります。

【対策】

  • ・擁壁の定期的な点検
  • ・専門家による診断を受け、必要に応じて補修、補強
  • ・宅地造成等規制法など関連法規を遵守して造られた擁壁か確認
  • ・擁壁の水抜き穴が適切に機能しているか確認し、詰まりがあれば清掃

地盤改良だけに頼らず、ハザードマップを確認してリスクを低減しましょう。

盛土・造成地購入時に確認すべきポイント

盛土・造成地購入時に確認すべきポイント|横浜|矢島建設工業

ここでは、盛土や造成地を選ぶ前に確認すべきポイントを紹介します。

ハザードマップで液状化・災害リスク

土地購入を検討する前に、以下のようなハザードマップを確認し、土地の災害リスクを事前に把握しましょう。

  • ・重ねるハザードマップ:国土交通省が公表している、洪水や土砂災害・津波などのリスクを示したマップ
  • ・自治体ごとの土砂災害ハザードマップ:土砂災害警戒区域や特別警戒区域を示したマップ

重ねるハザードマップ|国土交通省

土地の選び方について、こちらで詳しく解説しています。

〈関連コラム〉住んではいけない土地の特徴とは?|後悔する前に確認しておきたい土地や見分け方を解説

過去の土地利用履歴・災害履歴

土地の過去の利用状況や災害履歴の調査も役立ちます。

  • ・過去の地形図や航空写真:国土地理院や自治体が保有している過去の地図や写真を調べると、その土地がかつて沼地や谷だったかどうかを確認できる
  • ・過去の災害履歴:その地域で過去に発生した地震や水害の履歴を調べると、将来的なリスクを予測できる

過去に問題があった土地では、同様の問題が将来も発生しやすいことを念頭に置きましょう。

大規模盛土造成地の確認

大規模盛土造成地には「谷埋め型」と「腹付け型」の2種類があり、どちらも地震時に滑動崩落のリスクがあります。

これらに該当するかは、自治体の窓口で調べられます。

大規模盛土造成地に該当する場合は、地盤の安全性について専門家に相談するのがおすすめです。

擁壁の種類や劣化状況の確認

盛土地盤の端には通常、擁壁が設置されています。

擁壁の種類や状態は、盛土の安全性を判断する手がかりになります。

  • ・擁壁の種類:コンクリート擁壁、石積み擁壁、ブロック積み擁壁など、どのような擁壁が使用されているかを確認
  • ・劣化状況:ひび割れ、はらみ出し、傾きなどの劣化症状がないかを確認
  • ・排水設備:雨の日など排水状況がわかりやすいときに、水抜き穴が適切に設置され、機能しているかを確認

まとめ

盛土にはリスクがありますが、専門家による適切な調査・診断のもと、適切な地盤改良工事を実施すれば、リスクを軽減できます。

「盛土だからダメ」と一律に判断するのではなく、個々の土地の状況を正確に把握し、必要な対策を講じましょう

矢島建設工業は、地盤調査から適切な地盤改良工事まで、安全な住まいづくりをトータルサポートいたします。

盛土地域での家づくりや地盤に関するご不安など、住まいづくりのことなら、なんでもお気軽にご相談ください。

 

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