
高気密高断熱住宅について、インターネット上では「必要ない」「住んでみたら息苦しい」と感じる方も多いようです。
しかし、これらの意見の多くは、不適切な換気や誤った設計や施工により誤解している可能性があります。
この記事では、高気密高断熱が必要ないと言われる理由や、その対策を解説します。
後悔しない家づくりのポイントや、高気密高断熱住宅のメリットもご紹介するので、ぜひご家族の最適な住まい選びの参考にしてください。
このコラムのポイント |
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・「高気密高断熱は必要ない」という意見は換気不足や施工不良による誤解で、設計や施工次第で防げます。 ・快適な家の実現には「断熱・気密・計画換気」の3つのバランスが不可欠です。 ・後悔しないために、信頼できる会社を選び、光熱費まで含めたトータルコストで判断しましょう。 |
Contents
高気密高断熱住宅とは|光熱費を抑えて一年中快適に暮らせる

高気密高断熱住宅について正しく理解するために、まずは「高気密」と「高断熱」それぞれの意味をご紹介します。
高断熱:外の暑さ・寒さを家の中に伝えない性能
- ・断熱性能は「UA値」で示され、数値が小さいほど高性能。
- ・高性能な断熱材を隙間なく施工することで実現できる。
高気密:家の隙間をなくし、空気の出入りを減らす性能
- ・気密性能は「C値」で示され、数値が小さいほど高性能。
- ・家に隙間があれば、断熱材の効果は薄れてしまう。
高気密と高断熱はセットで考える必要があります。
高気密高断熱住宅は、家全体を魔法瓶のように包み込むことで、光熱費を抑えて快適な室温を保てる住まいです。
高気密高断熱が「必要ない」と言われる5つの理由

高気密高断熱が「必要ない」と言われる、5つの理由と対策を解説します。
空気のよどみで「気持ち悪い」と感じることがある
「気持ち悪い・息苦しい」という問題の主な原因には、換気が十分でないことが考えられます。
隙間の多い家や換気計画が不十分な家では、効率的に換気できません。
【対策】
家の空気が綺麗に入れ替わるように計画されているか確認しましょう。
正しく設計された高気密高断熱住宅は、常に新鮮な空気が循環するため、気持ちよく暮らせます。
想像以上に「暑い・寒い」と感じる場合がある
「夏は暑く、冬は寒い」という不満は、主に窓が原因です。
家の中で最も熱の出入りが激しいのは窓で、夏は日差しで室温が上がり、冬は熱が逃げてしまいます。

【対策】
パッシブデザインの考え方を取り入れることで解決できます。
軒(のき)や庇(ひさし)で日差しを調整し、断熱性能の高い窓(トリプルガラス樹脂サッシなど)を採用しましょう。
立地を考慮した設計が、快適な室温を保つポイントです。
換気不足や施工不良は、結露やカビの原因に
高気密高断熱住宅で結露やカビが発生する原因として、主に換気不足や施工不良が考えられます。
断熱材の隙間などの施工不良は、目に見えない「壁内結露」を引き起こし、家の構造体を傷める危険があります。
また、施工が完璧でも、適切に換気されなければ室内の湿気が排出されず、カビや結露につながるのです。
【対策】
見えない部分の施工精度を確かめるためにも、信頼できる会社を選ぶことが不可欠です。
性能面へのこだわりは、工務店のホームページやショールームで確認できます。
また、外出時でも24時間換気システムを常に稼働させましょう。
窓が小さく・少なくなるというイメージがある
「性能を求めると窓が小さくなる」というのは、よくある誤解です。
一昔前の性能の低い窓は熱の出入りが大きかったため、窓の数を減らして、断熱性を確保する方法もありました。
【対策】
高性能な窓を選べば、開放的な大開口と高い住宅性能を両立できます。
熱を通しにくい「樹脂サッシ」や「トリプルガラス」などを採用すれば、大きな窓を設けても断熱性を損ないません。
建築費用が高くなる
高気密高断熱住宅は、高性能な建材や丁寧な施工が必要なため、建築費用が高くなる傾向があります。
【対策】
建築費用だけでなく、光熱費を含めた総合的なコストで考えましょう。
高気密高断熱住宅は冷暖房効率が良く、月々の光熱費を削減できるため、長期的にみれば建築費用の差額を回収できる可能性があります。
また、後述する補助金制度を活用すれば、費用負担を軽減できます。
それでも高気密高断熱が選ばれるメリット

「高気密高断熱は必要ない」と言われる理由を見てきましたが、それを上回るメリットがあるからこそ、現代の家づくりでは高気密高断熱がスタンダードになっています。
ここでは、高気密高断熱住宅の4つのメリットをご紹介します。
一年中快適な室温を保ちやすい
高気密高断熱住宅の特徴は、家中の温度差が少なく、一年を通して快適な室温で過ごせる点です。
エアコンの効きが良くなるのに加え、外気温に左右されにくくなるため「リビングは暖かいのに、廊下やトイレは寒い」といったことがなく、どこにいても快適です。
健康的な暮らしができる
冬場の急激な温度変化によって起こる「ヒートショック」は、心筋梗塞や脳卒中の引き金となる危険な現象です。
高気密高断熱住宅は、家全体の温度が均一に保たれるため、ヒートショックのリスクを大幅に低減できます。
また、換気と高い断熱性により結露を防ぎ、アレルギーの原因となるカビやダニの発生を抑えます。
遮音性が高く、屋外の騒音が気にならない
気密性が高い住宅は音の出入りも少なく、遮音性にも優れています。
車が走る音や近隣の生活音といった屋外の音が気にならず、静かな室内環境でリラックスして過ごせます。
光熱費を削減できる
高気密高断熱住宅は冷暖房のエネルギー消費を抑えられるため、光熱費の削減に直結します。
近年の電気代高騰を考えると、長期的には大きな節約効果が見込めます。
高気密高断熱住宅で後悔しない4つのポイント

高気密高断熱住宅のメリットを活かし、後悔しないための4つのポイントをご紹介します。
施工実績が豊富な会社を選ぶ
気密や断熱性能は施工精度に左右されるため、会社選びが重要です。
以下を確認し、信頼できる工務店に相談しましょう。
- ・実績の豊富さ:高気密高断熱住宅の施工実績が十分にあるか。
- ・実物の体感:モデルハウスや見学会で、実際の快適性を体感できるか。
信頼できる会社を見つけるには、ハウスメーカーと工務店の違いや、どちらの方が相性が良いかを知っておく必要があります。
それぞれの特徴やコストパフォーマンスについて、こちらで詳しく解説しています。
〈関連コラム〉ハウスメーカーと工務店の違いは?価格差だけでなくコストパフォーマンスを比較しよう
「断熱・気密・換気」をバランス良く設計する
高気密高断熱住宅の快適さは「断熱・気密・換気」3つのバランスで決まります。
どれか一つが欠けては、本来の性能を発揮できません。
- ・高断熱:家を魔法瓶のように覆い、外の熱の影響を減らす。
- ・高気密:家の隙間をなくし、熱や空気の出入りを防ぐ。
- ・計画換気:24時間換気システムで、常に新鮮な空気と入れ替える。
窓の「性能・配置・大きさ」を工夫する
窓は熱の出入りが大きく、家の断熱性能において弱点になりやすい場所です。
後悔しないために、以下の3つの視点で窓を計画しましょう。
- ・性能:熱を通しにくい「樹脂サッシ」や「トリプルガラス」など、高性能な製品を選ぶ。
- ・配置:夏の日差しを避け、冬の日差しを取り込める位置に設置する。
- ・設計:軒や庇で、日射をコントロールする。
補助金を活用する
国や自治体は、省エネ性能の高い住宅の普及を促進するため、さまざまな補助金制度を用意しています。
例えば「子育てグリーン住宅支援事業」や「ZEH(ゼッチ)支援事業」など、条件を満たすことで数十万〜百万円以上の補助金を受けられる場合があります。
補助金制度は複雑で、申請期間が設けられているため、申請サポートの実績が豊富な工務店を選ぶと安心です。
高気密高断熱は必要ないQ&A

高気密高断熱住宅に関して、矢島建設工業がよくいただく質問・回答を紹介します。
Q. 窓を開けて換気してもいい?
A. 窓を開けて換気しても問題ありません。
しかし、高気密高断熱住宅の換気は、24時間換気システムによって自動的に行われています。
花粉の飛散が多い時期や、PM2.5が気になる日、真夏や真冬など、窓を開けたくない時でも、窓を閉めたまま常に新鮮な空気を保てる点がメリットです。
Q. 高気密高断熱なのにカビや結露が発生するのはなぜ?
A. 主な原因は「換気不足」と「日常生活から出る湿気」です。
以下の原因と対策を理解しておきましょう。
主な原因
- ・換気不足:24時間換気システムを止めている、またはフィルターが汚れている。
- ・過度な湿気:加湿器の使いすぎ、洗濯物の大量の部屋干しなど。
有効な対策
- ・24時間換気システムを常に稼働させる。
- ・定期的に換気フィルターを清掃・交換する。
- ・サーキュレーターで空気を循環させる。
- ・調湿効果のある自然素材(無垢材、漆喰など)を内装に採用する。
高気密高断熱住宅で快適な湿度を保つための、具体的な対策や設計の工夫については、こちらの記事で詳しく解説しています。
〈関連コラム〉高気密高断熱の住宅の湿度が下がらないのは「隙間がない」から|湿気対策や快適な湿度を保つ設計も解説
Q. 吹き抜けやリビング階段を作ると空調が効かない?
A. 高気密高断熱住宅では問題ありません。
家全体の温度差が小さいため、吹き抜けなどの大空間でも少ないエネルギーで快適な温度を保てます。
シーリングファンを設置すれば、さらに空気の循環が促され、冷暖房効率が向上します。
開放的な大空間と快適性を両立できるのは、高気密高断熱住宅ならではの魅力です。
吹き抜けをよりおしゃれで機能的な空間にするためのデザインや設計のポイントについては、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
〈関連コラム〉吹き抜けの梁を見せるメリット・デメリットとは?施工事例や設計のポイントも解説
まとめ
高気密高断熱住宅が「必要ない」と言われる理由の多くは、換気不足や設計ミスなど、本来の性能を発揮できていない場合がほとんどです。
後悔しない家づくりを実現するには、知識と技術力のある信頼できるパートナー選びが重要です。
神奈川県で高気密高断熱な住宅をご検討中の方は、ぜひ「矢島建設工業」へご相談ください。


