木造アパートは耐用年数22年が過ぎても寿命ではない!過ぎた後のリスクと3つの対処法

木造アパートの法定耐用年数である22年は、税務上の減価償却期間であり、建物の実際の寿命ではありません。

適切なメンテナンスを実施すれば、法定耐用年数を超えても運用可能です。

ただし、耐用年数経過後は減価償却による節税効果がなくなり、修繕費の増加や売却時の融資難などの課題が増加します。

長期的な収益確保には、計画的な修繕とリフォーム、適切なタイミングでの建て替えや売却判断が必要です。

このコラムのポイント
・木造アパートの法定耐用年数は税務上の区切りにすぎず、メンテ次第で65年以上維持可能です。
・22年以降は、減価償却終了や修繕費増による資金繰りの悪化に注意が必要です。
・計画的な修繕積立と退去時の設備投資が、長期的な安定経営に欠かせません。

木造アパートの耐用年数と法定耐用年数の違い

木造アパートの耐用年数と法定耐用年数の違い

木造アパート経営を始めるにあたって押さえておきたい点が「耐用年数」と「寿命」の違いです。

似た言葉ですが、税金計算上のルールである「法定耐用年数」と、建物が物理的に住める「寿命」は別の意味を持っています。

【木造の法定耐用年数と物理的寿命の違い】

用語 およその期間 意味・役割
法定耐用年数 22年 ・国が定めた「減価償却(経費化)」ができる期間
・税金計算のためのルール
物理的寿命 約65年以上 ・建物が壊れずに雨風をしのいで住める期間
・メンテナンス次第で長く保てる

木造アパートの法定耐用年数は22年

「法定耐用年数」とは、国が定めた「減価償却」という経費計上ができる期間のことです。

あくまで税務上のルールであり、期間を過ぎたからといって建物が崩壊するわけではありません。

22年という期間は、アパート経営における税金計算の区切りです。

期間を過ぎると減価償却費を経費にできず、帳簿上の利益が増え、税金が高くなる傾向があります。

法定耐用年数と建物の物理的寿命は異なる

建物の「物理的寿命」は、法定耐用年数とはまったく別ものです。

一般的に、木造建築の物理的な寿命は約65年以上と言われています。

適切なメンテナンスを行えば、さらに長く使い続けることも可能です。

日本の木造建築技術は高く、防水や防蟻の対策を施せば長持ちします。

一方で「経済的寿命」という考え方も必要です。

これは、家賃収入が維持費を上回り、利益を生み出し続けられる期間を指します。

銀行融資は法定耐用年数を基準にすることが多いため、22年を過ぎると融資がつきにくくなります。

法定耐用年数を過ぎた木造アパートのリスクとデメリット

法定耐用年数を過ぎた木造アパートのリスクとデメリット

法定耐用年数である22年を過ぎると多くのオーナー様が直面するのが、「満室経営で一見入居率は悪くないのに、資金の手残りが減る」という悩みです。

耐用年数を超えた後に待ち受ける主なリスクは以下の3点です。

  • 税負担の増加:減価償却終了により帳簿上の黒字が増える
  • 維持費の増大:大規模修繕が必要になり出費がかさむ
  • 売却が難しくなる:買い手に融資がつかず売りづらくなる

減価償却が終わり税金負担が増える

法定耐用年数が終了すると、税金の負担が急増する現象が起こります。

減価償却費がなくなることで帳簿上の黒字幅が拡大し、所得税や住民税の支払額が増えるためです。

注意が必要なのは、ローンの元金返済は経費として認められない点です。

税金の支払いとローンの元金返済の合計額が、家賃収入を上回る状態を「デッドクロス」と呼びます。

帳簿上は黒字経営であるにもかかわらず、手元の現金が減っていく状態です。

大規模修繕などの維持費用がかさみ収支が悪化する

築20年を超えたあたりから、建物の維持にかかる費用は高額になっていきます。

とくに屋根や外壁などは、以下のまとまった費用がかかるのが一般的です。

  • 外壁塗装:150万円〜300万円
  • 屋根の塗装、葺き替え:100万円〜250万円
  • 防蟻処理:数万円〜数十万円

これらの修繕は、建物を守るために避けて通れません。

あらかじめ将来の出費を予測し、資金を確保しておきましょう。

高額になりがちな外壁メンテナンスですが、既存の外壁の上から新しい素材を重ねる工法などを選ぶことで、費用対効果を高められるケースがあります。

〈関連コラム〉外壁カバー工法の失敗・後悔例|解決方法「モルタルカバー工法」も紹介

買い手が融資を受けにくくなるため売却が難しくなる

多くの金融機関は、融資期間を決める際に「法定耐用年数から経過年数を差し引く」という考え方を用います。

耐用年数を過ぎた物件には長期間の融資がつきにくく、物件を購入できる人が「現金一括払いが可能な層に」限られます。

売却価格を下げざるを得なくなれば、売却による利益確保が困難です。

また、建物としての評価額もゼロに近づくため、土地価格のみでの取引となるのが基本です。

木造アパートの法定耐用年数が過ぎたときの対処法3選

木造アパートの法定耐用年数が過ぎたときの対処法3選

法定耐用年数を迎えた後の選択肢は、大きく分けて「維持・建て替え・売却」の3つです。

どの選択が適しているかは、オーナー様の資金状況や土地の特性によって異なります。

2025年の最新事情も踏まえた上で、具体的な3つの対処法をご紹介します。

リフォームやリノベーションして維持する

手元の資金を守りながら、収益を維持し続ける方法です。

ただし、2025年の法改正により、主要構造部の過半におよぶ大規模なリノベーションには建築確認申請が必要となりました。

フルリノベーションではなく、宅配ボックスや無料Wi-Fi、モニター付きインターホンの設置など、入居率に直結する設備投資に絞るのがおすすめです。

また、2025年は以下のような補助金制度が充実しています。

  • 賃貸集合給湯省エネ2025事業:給湯器の交換
  • 先進的窓リノベ2025事業:窓の断熱改修や内窓の設置など

〈参考〉賃貸集合給湯省エネ2025事業

〈参考〉先進的窓リノベ2025事業

アパートを建て替えて新築経営する

資金力があり、土地のポテンシャルが高い場合に検討できる選択肢です。

最新の設備や間取りを取り入れることで、高い家賃設定も狙えるだけでなく、法定耐用年数がリセットされます。

再び長期間の減価償却が可能となり、銀行からの融資も引きやすくなります。

ただし、現在の入居者様に退去してもらうための立ち退き交渉が必要です。

立ち退き料の相場は、一般的に「家賃6か月分に引越し費用を加えた額」と言われているため、慎重に検討しましょう。

老朽化したアパートを建て替えるべきか、あるいは住み替えを検討すべきか、費用相場や判断の基準について、こちらで解説しています。

〈関連コラム〉建て替え・住み替えはどっちがいい?費用相場の差額や相談先の基準を解説

現況のまま売却するか、解体して更地で売却する

キャッシュフローの悪化を避けるための、出口戦略の一つです。

法定耐用年数を過ぎた木造物件は、高所得者層や法人にとって魅力的な投資対象となる場合があります。

空室が埋まらない場合や、修繕費がかさむ場合は、無理に維持せず売却するのも一つの手です。

更地にせず「古家付き土地」や、入居者がいる状態での「オーナーチェンジ」として売却する方法もあります。

更地にする場合は解体のタイミングに注意しましょう。

更地のまま放置すると「住宅用地の特例」が外れ、固定資産税が最大6倍になるリスクがあるため、売却が決まってから解体するなどの調整が必要です。

木造アパートの寿命を延ばし健全経営するためのコツ

木造アパートの寿命を延ばし健全経営するためのコツ

適切な資金計画や定期的なメンテナンスを行えば、木造でも鉄骨造やRC造に劣らない長期間の稼働が可能です。

経営を安定させるためのポイントをご紹介します。

修繕計画の策定と資金の積み立て

長期的な健全経営には、計画的な資金の積み立てが不可欠です。

国土交通省のガイドラインを参考に、以下の目安で積み立てを行いましょう。

  • 積立額の目安:床面積1平米あたり約350円〜400円
  • 具体例:延床面積200平米の場合、月額7万円〜8万円

屋根や外壁の塗装、防水工事などは10年から15年の周期で必要です。

工事時期が重なり資金ショートを起こさないよう、長期的なキャッシュフロー表を作成し、出費を可視化しましょう。

〈参考〉マンションの修繕積立金に関するガイドライン|国土交通省

退去のタイミングで効果的な修繕やリフォームを行う

入居者が退去したタイミングは、入居中には施工が難しい工事で物件の価値を高める絶好の機会です。

床の防音工事や、ユニットバスをバス・トイレ別に分離する工事などが挙げられます。

汚れた部分の原状回復にとどまらず、次の入居者が決まりやすくなる付加価値をつけることがポイントです。

入居者に喜ばれる設備は、主に以下の5つです。

  • ・宅配ボックス
  • ・室内物干し
  • ・IoT/スマートホームハブ
  • ・スマートロック
  • ・防災設備(蓄電池や備蓄品)

入居付けや管理に強い管理会社を選ぶ

アパート経営の安定性は、パートナーとなる管理会社の質に左右されます。

とくに木造アパートは、騒音や水漏れなどのトラブルが発生しやすいため、迅速かつ適切に対応できる管理会社選びが大切です。

また、空室が出た際の提案力もポイントです。

安易な家賃値下げではなく市場のニーズを分析し、「高速インターネットの導入」や「ペット可への条件変更」など、収益を落とさずに空室を埋める提案ができる会社を選びましょう。

まとめ

木造アパートの法定耐用年数22年とは、あくまで税務上の区切りに過ぎません。

適切なメンテナンスを行えば、建物は長く使い続けられます。

税金負担が増えるリスクや、将来の修繕費用についてあらかじめ理解し、準備をしておくことが大切です。

木造アパートの修繕計画や、建て替え・リフォームの判断で迷ったときは、神奈川県を中心に一都三県でさまざまな住まいづくりをお手伝いしてきた「矢島建設工業」にお気軽にご相談ください。

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